All that glitter is not gold.

それでも、きらきらしたものがすき。

岡崎体育と夢とわたしの話

岡崎体育をいつ知ったのか、正確な時期は思い出せない。

たぶん『MUSIC VIDEO』で知ったんだと思う。LINE NEWSとかで「ミュージックビデオあるあるの曲が話題」みたいな感じで見たんだったんじゃないかな。

めちゃくちゃ面白かった。特に「コマ撮り」のとこと「二分割で男女を歩かせて最終的に出会わせる」がツボだったっけ。

そのあといろいろMVを漁って、気付けば気になるアーティストの一人になっていた。

 

そんな折、二つの偶然が重なってわたしは岡崎体育の単独ライブに足を運ぶことになる。

一つは、近しい友人の存在。10年来の付き合いになる友人が岡崎体育の単独ライブに行った、めちゃくちゃに面白かったという話をしてくれた。

もう一つは、恋人の海外旅行。例年なら彼の誕生日は一緒に過ごしていたのだけれど、その年は彼が海外旅行に行っていて直接祝えなかった。一人で過ごすのも癪だから何かライブにでも行こうか、と思っていた矢先、まさにその誕生日に岡崎体育が東京でツアーファイナルを行うことを知ったのである。(2017年の「キミイロハートⅡ」ツアーラストのことです)

 

これは岡崎体育が来いと言っているに違いない。ありがたいご縁に恵まれてなんとかチケットを手にすることができたわたしは、せっかくの単独だからしっかり予習をしていこう、そう思ってアルバム「BASIN TECHNO」「XXL」を聴きこんでいった。

 

この予習段階でわたしは完全に「アーティスト・岡崎体育」にオチていた。

特に「Open」「XXL」の2曲に惹かれた。もともとアイドル畑の人間であるわたしは激しい曲を聴く機会はあまりなかったけれど、攻撃的なのに自然と身体が踊り出してしまう、重厚かつキャッチーなサウンドにドハマリしてしまったのだ。

ライブではそんなかっこいい曲たちもネタ曲たちも、そして「式」のようなしっとりとした曲もバランスよく織り交ぜられていて、岡崎体育というアーティストの奥深さを実感させられた。

 

「単独でさいたまスーパーアリーナ公演を成功させたい」という彼の夢を知ったのは、その頃だったかもしれない。

 

話は大きく変わるが、わたしは生まれてこの23年、「夢」というものを持ったことがない。

幼稚園や小学校で「夢」というものをテーマに絵や作文を作らされたことは数えきれないほどあったけれど、わたしはその度に「みんなが描いているのと同じこと」「今の自分が好きなことをそのまま職業にするならこれだろ」というような、その場しのぎのものを描いていた。誰かを「尊敬する」ことはあっても、誰かに「憧れる」ことはなかったのである。

だから、夢を持てる人は「夢を持てる」というただそれだけで十分わたしの尊敬の対象になりえるのだ。そして、夢を公言し続ける岡崎体育もまた、わたしにとってそういう存在になっていった。

 

初ライブ参戦のあとも、わたしはゆるく岡崎体育を見守っていた。特に2018年のロッキンでGRASS STAGE(ロッキンの最大ステージ)に立った時はガチ勢でもないのに身震いした。B'zの裏はキツいと歌っていた人がGRASSである。

そしてそのステージでも、彼は「必ずさいたまスーパーアリーナ公演をやる。成功させる」と力強い言霊を残して去っていった。(そしてそれを見てホールツアーにエントリーするチョロいわたしであった)

 

その2か月後、念願のさいたまスーパーアリーナ公演が決まった。すぐに参戦を決意したのは言うまでもない。

 

そして今日のさいたまスーパーアリーナ公演もやはり最高だった…と書きたいところなのだけれど、もう一つ岡崎体育への思い入れが深まったライブがある。

今年1月に行われた「エキスパート」ツアーのNHKホール公演だ。

 

その前の週(だったかな?)にインフルと胃腸炎を併発した彼の体調はまだ完全ではなかった。時々せき込むし、セトリも少し短くしたと言っていた。短くした、はずだったのだけれど。

ある曲が終わったあとのMCの際、客席から「ポーズも聴きたい!」という男の子の声が上がった。続いて、「ジャリボーイ・ジャリガールも!」という声も。

それらの声は岡崎体育にも聞こえていた。「じゃあ、やりますか!」とMacから音源を探す岡崎体育。何回かエラーを出したあと、最終的にその2曲は、かかった。

この時わたしは思ったのである。岡崎体育は、ヒーローだと。

ヒーローの定義なんてわからないけれど、誰かの夢や希望を叶えてしまうその姿はヒーローとしか言いようがなかった。自分の夢だけでなく、誰かの夢まで叶えてしまう姿を心底かっこいいと思った。

(余談だが、ライブが良すぎてCDを買ってしまうという経験をこの時初めてした)

 

今度こそさいたまスーパーアリーナの話をする。

今日のライブ中、彼は何度も「7年前からの夢をこうして叶えることができてうれしい、ありがとう」と口にしていた。その度にみんなが、「おめでとう」の声や拍手で応えていた。本当に、いい空間だった。

 

誰かを応援するということの良さは、こういうところにあると思う。

わたしは何組ものアイドルやバンドの現場に足を運んでいるが、こうした表現者たちはそれぞれが「大きな会場でライブをしたい」とか「オリコン1位を取りたい」とか、何らかの夢を持って活動していることがほとんどである。そういった人たちのファンでいるということは、彼らの背中を押し、夢を叶える瞬間に立ち会うことができるということだ。言い換えれば、一緒に夢を叶えることができるのだ。

嵐の『Hero』という曲に、「あなたの夢はみんなの夢」という歌詞がある。同じことを、それぞれのアイドルやバンドに対してわたしは強く思っている。

 

たぶんこの先も、わたし自身が夢を持つことはないと思う。けれど、誰かを好きでいることで彼らの夢を通して幸せな気持ちを共有することができるのだから、これほど「夢のある話」もないじゃないか。

 

最後に岡崎体育の話に戻ろう。彼は今日のライブのダブルアンコールのMCで、来年の「大阪でのアリーナ公演」の開催を発表した。彼にまだ夢があることに、わたしは心底安堵した。

これからも誰かが夢を叶える瞬間になるべく多く立ち会いたい。そんな気持ちを持たせてくれた岡崎体育には感謝している。そして心から「おめでとう」と言いたいと思ったさいたまスーパーアリーナ公演の夜だった。